都有施設だより第8号

東京国際クルーズターミナル、臨港道路南北線及び接続道路(海の森大橋)

令和3年1月29日


○都有施設の計画的な維持管理・更新、都の施策を反映した都有施設の機能・性能のレベルアップなどの取組についてお知らせしていきます。
今回は港湾局東京国際クルーズターミナル、臨港道路南北線及び接続道路(海の森大橋)をご紹介いたします。

・東京国際クルーズターミナル<東京国際クルーズターミナルの概要>

近年、客船の大型化と市場の拡大が進んでいますが、従来の晴海客船ターミナルでは、レインボーブリッジの高さが制約となり、大型客船は入港できませんでした。そこで、都は客船の寄港による経済効果を確実に取り込むため、レインボーブリッジの手前側に新たなクルーズターミナルを整備することとし、令和2年9月に開業しました。

東京国際クルーズターミナルの外観写真
<図1 東京国際クルーズターミナルの外観写真>

<東京国際クルーズターミナルの特徴>

東京国際クルーズターミナルは海上に構築した土木構造物(連絡通路、ターミナルビル基礎、岸壁)上に地上4階建て延床面積約19,000㎡の建物が設置されています。※建物の1階はエントランスロビー、2~3階は乗下船フロア、4階は送迎デッキ・送迎ラウンジとなっており、着岸するクルーズ船の大きさに応じて乗下船フロアを変え、最大5千人規模の利用に対応できます。屋根部分は波や船の帆をイメージして反った形になっています。屋根の形状には室内環境をコントロールする役割もあり、北東側に屋根を開き、西側を低く抑えることで室内への日射を調整し、夏は熱を屋根伝いに誘導して廃熱、冬は集熱して空調に取り入れる仕組みとすることで、エネルギー効率の高い屋内空間を実現しています。
※建物をターミナルビル基礎が支える構造となっています。

東京国際クルーズターミナルの内装写真
<図2 東京国際クルーズターミナルの内装写真>

<東京国際クルーズターミナルの工事>

東京国際クルーズターミナルは土木構造物と建築構造物(ターミナルビル)から構成されます。建築構造物は土木構造物と一体(下イメージを参照)となっており、国内で類をみない構造となっています。土木構造物と建築構造物では地震発生時の揺れ方が異なるため、一体となった場合の揺れについて詳細なシミュレーションを行い、大地震にも耐えうるよう設計されています。土木構造物の基礎を構築するため、工事では鋼管杭を海底に打設し、その上にジャケットと呼ばれるトラス構造(複数の三角形による骨組構造)の部材を据付けしました。ジャケットを据付けるためには精度の高い杭の施工管理が必要であったため、実際の杭と三次元設計図を重ね合わせた映像をモニターで視覚的に確認(AR技術)するなど高精度な施工に努めました。
ジャケットは重量が約1,343トンにもなり、国内最大級の施工規模のものですが、固定起重機船(3,000トン吊)等を用いることで無事に設置することができました。

東京国際クルーズターミナルの構造イメージ
<図3 東京国際クルーズターミナルの構造のイメージ>
東京国際クルーズターミナルの工事写真
<図4 東京国際クルーズターミナルの工事写真>

・臨港道路南北線及び接続道路(海の森大橋)

<臨港道路南北線及び接続道路概要>
臨港道路南北線及び接続道路は江東区有明と中央防波堤外側地区をつなぐ総延長約6.1kmに及ぶ道路で、車線が往復4~6車線、海底トンネルの東京港海の森トンネルや海の森大橋が道をつなぎます。コンテナ取扱量の増加に伴い、付近の交通混雑は年々激しくなっており、混雑緩和は大きな課題となっていました。この道路により東京港中央防波堤外側地区に整備する新コンテナふ頭へのアクセス性改善と物流効率化が期待されます。ここでは臨港道路南北線及び接続道路の一部を構成する海の森大橋について紹介します。

臨港道路南北線及び接続道路の地図
<図5 臨港道路南北線及び接続道路の地図>

<海の森大橋の特徴>

海の森大橋は東京2020大会において、ボート及びカヌー(スプリント)の競技会場となる「海の森水上競技場」に架かる橋です。長さは約250mあり、オリンピック競技への影響を考慮し、水域内に橋脚を設けない1径間の橋として整備されています。橋梁の形式は、ニールセンローゼ橋(下図を参照)でアーチ型となっています。また、臨海エリアに設置される橋であることから下部工(橋脚等)の鉄筋には樹脂塗装を施すなど塩害対策を施し、長期間の供用に耐えうるように設計されています。

海の森大橋の写真
<図6 海の森大橋の写真>
ニールセンローゼ形式の橋の図
<図7 ニールセンローゼ形式の橋の図>

<海の森大橋の工事>

海の森大橋の工事は海の森水上競技場の工事等で現場が輻輳していたことから、上部工(橋桁等)を現場で組み立てるのではなく、予め組み立てた上部工を大型台船を用いて現場まで運搬し、海上において一括架設(現場に建設した橋台・橋脚上に据付)する方法を選択しました。架設位置から約400m離れた施工ヤード(作業場)で組立てた上部工(重量約6,000トン)を特殊な台車へ搭載した状態で、台船に移動させます。台船に載せる際は陸域と台船の高さが一致する潮位になるまで待機し、上部工の乗り込みに合わせてバラスト水(船体安定のために積み込む水)を排水する等調整を行いました。そして台船での移動には護岸と台船をワイヤーで結びウインチ(巻き上げ機)を利用することで安全に運搬することができました。一括架設にあたっては潮位の変動を利用し、潮位が上昇したタイミングで最終架設位置まで上部工を移動、潮位の低下や台船のバラスト水調整を活用して橋の架設を行いました。

海の森大橋の工事の写真
<図8 海の森大橋の工事の写真>

以上の内容を通じて、東京港の機能強化に向けた取組を進めています。東京都では引き続き、安全・安心のまちづくりを推進すべく、都有施設の計画的な維持管理・更新、都の施策を反映した都有施設の機能・性能のレベルアップに取り組んでいきます。

記事ID:006-001-20240123-011322